日本人や永住者の配偶者として日本で生活していた方が、離婚後も引き続き日本に留まりたい場合、避けて通れないのが在留資格の変更です。いわゆる「離婚定住(りこんていじゅう)」と呼ばれるこの手続きは、入管法上の明確な基準(告示)がないため、審査が非常に厳しいことで知られています。
本記事では、離婚定住ビザを勝ち取るための条件、審査の壁、そして準備すべき具体的なポイントを詳しく解説します。
目次
1. 離婚後、ビザを放置するとどうなるか?
「日本人の配偶者等」のビザを持っていても、離婚した瞬間にその資格の基盤は失われます。
- 14日以内の届出義務: 離婚後14日以内に出入国在留管理局へ報告しなければなりません。
- ビザ取消のリスク: 離婚後、正当な理由なく6ヶ月以上配偶者としての活動を行っていない場合、在留資格の取消対象となります。
- 就労制限: 「定住者」に変更するまでは、現在のビザの期限内であっても、実態として「配偶者」ではないため、更新は不可能です。
2. 「離婚定住」が認められるための3つの大きな柱
法務省のガイドラインに基づくと、主に以下の3点が審査の核心となります。
① 婚姻期間の長さ(おおむね3年以上)
実体のある婚姻生活が3年以上続いていることが一つの目安です。
- 3年以上: 比較的、定住者への変更が認められやすい傾向にあります。
- 3年未満: 非常に厳しくなります。ただし、DV被害などの特別な事情がある場合は考慮されます。
② 独立した生計維持能力
日本で誰の助けも借りずに生活していける能力(収入・資産)があるかどうかが問われます。
- 仕事: 正社員である必要はありませんが、安定した収入(社会保険への加入状況など)がチェックされます。
- 公的義務の履行: 税金、年金、健康保険を滞納していると、不許可リスクが極めて高くなります。
③ 日本に在留すべき特別な事情
なぜ母国に帰るのではなく、日本でなければならないのかという理由です。
- 未成年の実子を養育している: 日本人との間に子供がおり、親権を持って日本で育てる場合は、婚姻期間が短くても許可される可能性が非常に高いです。
- 日本語能力や定着性: 日本語が堪能で、長年日本で働き、生活基盤が完全に日本にあること。
3. 審査で「不許可」になりやすいケース
せっかく申請しても、以下のような場合は厳しく判断されます。
- 別居期間が長い: 離婚届を出す前から長期の別居がある場合、「婚姻が破綻していた」とみなされ、3年のカウントから除外されることがあります。
- オーバーワーク: 過去に資格外活動違反(週28時間以上の就労など)があった場合。
- 身元保証人が見つからない: 定住者申請には、知人や友人などによる「身元保証書」が必要です。
4. 申請に必要な書類(例)
個別の状況により異なりますが、一般的に以下の書類を揃える必要があります。
| カテゴリ | 準備する書類 |
| 基本書類 | 在留資格変更許可申請書、写真、パスポート、在留カード |
| 離婚の証明 | 戸籍謄本(離婚の記載があるもの)、離婚届受理証明書など |
| 経済力の証明 | 在職証明書、直近の住民税の課税・納税証明書、給与明細、預金通帳の写し |
| 理由書 | 最重要。 なぜ日本に定住を希望するのかを詳細に記述した書面 |
| 身元保証 | 日本居住者による身元保証書、保証人の住民票、所得証明書 |
5. 成功の鍵は「理由書」の質にある
離婚定住の申請において、最も重要なのは**「定住理由書」**です。単に「日本が好きだから」「友達がいるから」という理由では不十分です。
- これまでの婚姻生活の経緯
- 離婚に至ったやむを得ない事情
- 日本での具体的な仕事の内容と将来の展望
- 母国に帰ることが困難な具体的理由(既に母国に頼れる親族がいない、など)
これらを論理的に、かつ証拠資料(振込記録や写真、メールのやり取りなど)を添えて説明する必要があります。
まとめ:早めの準備が未来を分ける
離婚定住ビザへの変更は、時間との戦いです。離婚届を出す前から、その後のビザをどうするか計画を立てておくことが理想的です。
条件が厳しいと感じる場合や、婚姻期間が短い場合は、独力で判断せず、入管業務に詳しい行政書士などの専門家に相談することを強くお勧めします。