新しく事業を始める方の強い味方が、日本政策金融公庫(公庫)の創業融資です。しかし、「誰でも借りられる」わけではありません。公庫の担当者は、あなたの事業のどこを見ているのか? 行政書士の視点から、審査をクリアするための「羅針盤(ポイント)」を解説します。

1. 自己資金の「出所」と「生活水準」

公庫は、通帳のコピーを単に「残高」として見るのではなく、「生活の履歴」として読み解きます。

  • タンス預金は原則NG: 「親から現金でもらった」「家で貯めていた」は証明ができないため、自己資金とみなされないことが多いです。少なくとも申請の半年前には口座に入れ、履歴を作る必要があります。
  • 家計の安定性: 家賃、公共料金、スマホ代、そして社会保険料の引き落としが1日でも遅れていないかを見ます。「期限を守れない人は、返済も遅れる」と判断されるためです。
  • 配偶者の通帳: 状況により、配偶者や家族の通帳の提示を求められることもあります。世帯全体での資金繰りを見るためです。

2. 「勤務経験」の質と期間

単に「5年働いた」だけでなく、その中身が問われます。

  • 役職と権限: 「店長としてシフト管理や発注をしていた」「営業職として月間数千万の予算を動かしていた」など、経営に近い経験があるか。
  • 技術の証明: 調理師免許、建築士、あるいは先生のような「行政書士合格」などの国家資格は強力な武器になります。
  • 一貫性: これまでのキャリアと、これから始めるビジネスに「一貫性」があるか。全くの未経験業種での創業は、融資額が大幅に減るか、不許可になる確率が極めて高いです。

3. 事業計画書の「数字のリアリティ」

「売上予測」を立てる際、審査官が最も嫌うのは「希望的観測」です。

  • 売上の根拠(方程式):
    • 飲食店なら:席数 × 回転数 × 客単価
    • Webサービスなら:見込みPV × コンバージョン率 × 単価 これらを「平日は〇名、土日は〇名」と細かく算出しているか。
  • 売上の裏付け(エビデンス): すでに確保している顧客リスト、提携予定先からの「発注書(内諾書)」、同業他社の実数値データなど。
  • 損益分岐点の把握: 「最低でも月〇〇万円売り上げれば、赤字にならない」というデッドラインを経営者が把握しているか。

4. 個人の信用情報(CIC等)

これは「概要」を超えた、いわば「足切りライン」です。

  • カードローン・リボ払い: 現在の借入残高だけでなく、過去の「遅延」もチェックされます。
  • スマホ代の分割払い: 意外と多いのが、スマホ代の支払いが遅れて信用情報に傷がついているケースです。これは審査に直撃します。

アドバイス

融資の審査官は「あなたの敵」ではありません。彼らは「国民の税金を預かり、失敗しにくい事業に投資する責任者」です。

だからこそ、私たちは「熱意」を「数字」と「根拠」という共通言語に翻訳して伝えなければなりません。

  • 通帳をきれいにする(支払いを遅れない)
  • 経験を棚卸しする(自分の強みを言語化する)
  • 見積もりを正確に取る(1円単位の裏付け)

準備を完璧に整えることが、融資という大きな壁を乗り越える唯一の道です。一緒に、あなたの「経営の羅針盤」を磨き上げましょう。