外国人雇用の現場が大きく変わろうとしています。2024年に成立した改正法により、これまでの「技能実習制度」は廃止され、新たに「育成就労制度」が創設されることが決まりました。
2027年までの本格施行に向け、企業には何が求められ、どのような準備が必要なのか。実務上の重要ポイントを解説します。
1. 制度の目的が「国際貢献」から「人材確保・育成」へ
これまでの技能実習制度は、あくまで「技術移転による国際貢献」が目的であり、労働力不足の解消として活用することには制度上の矛盾がありました。 新制度である「育成就労」は、「我が国の人材確保および人材育成」を明確な目的として掲げています。これにより、外国人を「戦力」として長期的に雇用・育成していく方針が公的にも鮮明になりました。
2. 「特定技能」への移行を前提とした仕組み
育成就労制度の最大の柱は、「特定技能1号」へのスムーズな移行です。 原則として3年間の就労期間を通じて、一定の技能と日本語能力を習得させることで、試験を受けずに(または評価により)特定技能へとステップアップできる仕組みが整えられます。企業にとっては、育成した人材を長期(特定技能2号になれば無期限)にわたって雇用し続けられる大きなメリットがあります。
3. 「転籍(転職)」の制限緩和
実務上、企業が最も注視すべき変更点が「転籍」のルールです。 これまでの技能実習では原則認められていなかった「本人希望による転籍」が、以下の条件を満たす場合に認められるようになります。
- 同一の受入機関で一定期間(1年〜2年の範囲で職種ごとに設定)就労していること
- 技能検定や日本語能力などの一定の要件を満たしていること
これは、外国人の人権保護の観点から導入されたものですが、企業側にとっては「選ばれる職場環境」を作らなければ、他社へ人材が流出してしまうリスクを意味します。
4. 日本語能力の要件化
新制度では、入国時および特定技能への移行時に、客観的な日本語能力の証明が求められます。
- 入国時: 日本語能力試験 N5相当(A1レベル)
- 特定技能移行時: 日本語能力試験 N4相当(A2レベル)
企業や支援機関には、業務時間内外での日本語学習のサポート体制を整えることが、これまで以上に強く求められることになります。
今、企業が取り組むべき準備
制度の施行はまだ先ですが、今から準備できることは多岐にわたります。
- キャリアパスの提示: 3年後の特定技能移行を見据え、どのようなスキルを身につけ、どのような待遇を目指せるのかを明確にする。
- 労働環境の見直し: 転籍が緩和される中で、賃金体系や福利厚生、コミュニケーションの質を改善し、定着率を高める。
- 最新情報のキャッチアップ: 施行までの期間、具体的な職種区分や転籍の細則など、随時発表される詳細情報を把握しておく。
結び
育成就労制度への移行は、外国人雇用を「一時的な人手不足の解消」から「持続可能な経営戦略」へとシフトさせる機会です。制度改正の波に遅れることなく、適切な体制構築を進めていくことが、今後の企業競争力を左右することになります。
当事務所では、法改正に伴う最新情報の提供や、社内体制の整備に関するコンサルティングを行っております。不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。